高山病は、低気圧、低酸素な高地で発生する症状のことで、短時間で急激に高所へ登ったために、人間の身体が標高の高い環境に適応できないことで引き起こされる病気です。一般的には、段階的に身体を適応させる必要がありますが、現在の台湾の登山は、地形の大きな落差や登山形態の関係から、調整のための日程が組み込まれないことがほとんどです。そのため、高度2,500mを越えると、多くの人に高山病の症状が現れます。 高山病の発症は、高度、登る速さ、個人の適応能力等、3つの重要な要素によって決まります。一般的に、高山に入る途中で高山病の早期症状が出はじめ、通常は高度2,500mに到してから4~8時間程度で発症します。適応できれば、2日目や3日目には迅速に症状が軽減されます。 重篤な高山病は、ほとんどの場合で予防できるため、高山病に対する十分な理解さえあれば、未然に防いで安全に登山できます。以下、高山病の症状と予防、治療方法について紹介します。登山の際の参考にしてください。
(1)急性高山病(AMS) 軽度:頭痛、めまい、食欲減退、不眠、吐き気、むくみ、全身の倦怠感など。 中度症状:嘔吐、一般の痛止めでも改善しない頭痛、尿の減少など。重度症状:意識変容状態、歩行失調、休憩時の呼吸困難、肺のラ音、およびチアノーゼ(唇や手指が紫状になる血中の酸素不足現象)。 (2)高地肺水腫(HAPE)の初期症状︰運動能力失調(通常、最も早く現れる症状)、乾いた咳、倦怠感、胸部圧迫感、頻脈、呼吸が速くなる等。 後期症状︰安静時の呼吸困難、夜間の窒息感、咳が止まらない、または白い痰を伴う咳。重度では、ピンクまたは血性の喀痰があり、横になった安静時に呼吸困難を感じ、進行すると肺にラ音が聴取されます。 (3)高地脳浮腫(HACE)は、重度の頭痛(一般的に歩行時や力んだ際、または横になるとひどくなる)、吐き気、嘔吐、歩行失調、判断力の異常、異常行為、幻覚、意識混濁、昏睡状態が見られます。高地脳浮腫の判断方法は、つま先とかかとを交互に接触させて一直線に6歩歩かせます。このテストに合格しない場合は、すぐに下山する必要があります。
高度上昇の原則: 治療よりも予防が大切です。ゆっくりと高所へ登り、十分な時間をかけて高度の変化に身体を適応させることが、高山病を予防する上で最も重要なルールです。 一般的な予防原則:酸素スプレーまたは携帯式加圧袋を携帯する、激しいアクティビティーを避ける、保温する、喫煙・飲酒しない、鎮静剤を服用しない、高炭水化物を摂取する、豆類や炭酸飲料などガスが発生しやすい食物を食べないこと等により高山病が軽減され、発症を抑えることができます。 予防薬: 現在高山病の予防に有効であると証明されている薬物には、ダイアモックス(アセタゾラミド)、副腎皮質ホルモン剤(デキサメタゾン)、ニフェジピンCR錠(nifedipine)などがあります。サルファ剤にアレルギーのある方やグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症の方は、ダイアモックスを服用しないでください。 その他: 1. 3,000m以上の高山に登る場合、まず標高2,500m程度の場所で高度に適応してから(約1晩)、登山を開始します。2. 24時間以内に平地から3,000m以上の場所に登らなければならない場合、予防薬の服用を検討します。
早期発見、早期診断、早期治療が治療成功のカギです。治療の主な原則は、以下の通りです。 高地から離れる(下山)症状を引き起こす環境の改善(酸素を吸入させ、気圧の高い場所に所に行く)安静(酸素の消耗を減らす)、薬物治療
早期発見、早期診断、早期治療が治療成功のカギです。治療の主な原則は、以下の通りです。 標高2,500m以上の高所で頭痛、吐き気、喘鳴、嘔吐などの症状が現れたた場合、それら症状がその他原因によるものであると証明できる場合を除き、すべて高山病の兆候とみなします。 軽度の急性高山病の兆候があった場合、それらの兆候が完全におさまるまで、それ以上の高い場所には決して登らないでください。いかなる理由があっても、高山病の兆候が見られた人を一人でその場に放置しないでください。 症状が悪化した場合、または、症状が軽度の急性高山病から重度の急性高山病へと転化した場合、ただちに低地(最低1,000m以上低い場所)へ移動させます。 高山病において最も効果的で最も安全な処置、それは「下山」です。「下山」に次ぐ「下山」です。患者の意識が明瞭になって、歩行が可能となった時が下山のタイミングです。くれぐれも、患者が昏睡、または麻痺が起こってから救援を呼ぶことのないようにします。そうなってからの救命または下山は、とても困難となるためです。